2013年度業績

2013年度は、理学研究科長・学部長を退任して、研究教育活動に多くの時間を持てた年であった。まず4月に日本アフリカ学会50周年記念講演でゴリラ研究の成果を話し、4月末から5月にはガボンへ飛んでSATREPSのプロジェクトについて現地の研究者や地元関係者と討論した。帰国後ウェッジの座談会をやって、その成果を『達老時代へ』という本として出版。6月には日本モンキーセンター主催のモンキーカレッジで河合雅雄先生にモンキーセンター創立当時の話をしていただき、聞き手となった。7月には京都府教育委員会の主催で「人間にとって学びとは何か」という大それた話をし、8月にはマンチェスター大学で開かれた第17回国際人類学・民族学会で”Human have no nature, what they have is history”というかつてオルテガ・イ・ガシュットの格言をめぐる公開ディベートに参加、9月には朝日新聞地球環境フォーラムで「野生動物と人間の共存」について話をした。その間、ガボンに1ケ月、11月にもガボンを訪問してムカラバ国立公園のゴリラを調査し、私が2010年に観察したTreculia africanaという大きな果実の分配行動に再び出会った。帰国後すぐに論文にまとめて、現在投稿中。ムカラバでは現在指導中のガボン人学生がチンパンジーの道具使用行動を発見し、現場を2人で検証した結果、3つ以上の道具を組み合わせつぃようしていることが判明。これも現在論文にまとめて投稿中。12月には長年の懸案だった屋久島学ソサエティの設立総会が屋久島であり、「学びの場としての屋久島―サルとヒトと歩いた40年」という基調講演をした。京都で行われた赤澤威さん代表の新学術領域研究「ネアンデルタールとサピエンス交代劇の真相」のシンポジウムで「言語以前のコミュニケーションと社会性の進化」と題する講演をした。1月には、2005年の国際哺乳類学会で企画した本「Primates and Cetaceans: Field Research and Conservation of Complex Mammalian Societies」がやっと出版された。執筆者にはずいぶん迷惑をかけたが、これは霊長類学と鯨類学の双方にとって一里塚となる。完成を心から祝いたい。2月は日本学術会議で「野生動物の保全と共存へ向けて」というシンポジウムをやり、哺乳類学、霊長類学、獣医学、野生動物学、進化心理学から学際的な討論をした。日本学術会議のワイルドライフサイエンス分科会にとって弾みをつける一歩になったと思う。3月には、10月に発足した京都大学リーディング大学院ワイルドライフサイエンスのキックオフシンポジウムが国際高等研であり、連携拠点としてコンゴ民主共和国中央科学研究所のバサボセ・カニュニさん、場本共和国熱帯生態研究所のアルフレッド・ゴマンダを招いて話をしてもらい、私もゴリラの生活史と社会構造の進化について話した。多くの参加者があり、新しい門出にふさわしいシンポジウムだった。また、この2年間改組を検討してきた日本モンキーセンターが公益財団法人として船出し、京都大学が運営に大きく関与することになった。新所長に松沢哲郎さん、新園長に伊谷原一さん、私は新館長に任命された。この1年を振り返ると回顧と新しい計画が矢継ぎ早に組み合わされて現れた感がある。やっと一息ついたら、これまでにも増して重責が押し寄せてきたような気がする。覚悟して向かわねばならぬ一年になりそうである。

英語論文

  1. Inoue E, Akomo-Okoue EF, Ando C, Iwata Y, Judai M, Fujita S, Hongo S, Nze-Nkogue C, Inoue-Murayama M, Yamagiwa J (2013) Male Genetic Structure and Paternity in Western Lowland Gorillas (Gorilla gorilla gorilla). American Journal of Physical Anthropology 151: 583-588.
  2. Nakashima Y, Iwata Y, Ando C, Nkoguee CN, Inoue E, Okoue EF, Nguema PM, Bieneni TG, Banak LN, Takenoshita Y, Ngomanda A, Yamagiwa J (2013) Assessment of Landscape‐Scale Distribution of Sympatric Great Apes in African Rainforests: Concurrent Use of Nest and Camera-trap Surveys. American Journal of Primatology 75:1220–1230.
  3. Tsuchida S, Takahashi S, Mbehang Nguema PP, Fujita S, Kitahara M, Yamagiwa J, Ngomanda A, Ohkuma M, Ushida K (2013) Bifidobacterium moukalabense sp. nov. isolated from the faeces of wild west lowland gorilla (Gorilla gorilla gorilla) in Gabon. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 64, 449-455. (Epub ahead 2013 doi:10.1099/ijs.0.055186-0)
  4. Matsuda I, Tuuga A, Hashimoto C, Bernard H, Yamagiwa J, Fritz J, Tsubokawa K, Yayota M, Murai T, Iwata Y, & Clauss M. (2014). Faecal particle size in free-ranging primates supports a ‘rumination’ strategy in the proboscis monkey (Nasalis larvatus). Oecologia 1-11. DOI 10.1007/s00442-013-2863-9.
  5. Yamagiwa J, Basabose AK (2014) Socioecological flexibility of gorillas and chimpanzees. In : Yamagiwa J & Karczmarski L (eds), Primate and Cetacean : field research and conservation of complex mammalian societies, Springer, Tokyo, pp. 43-74.
  6. Yamagiwa J, Shimooka Y, Sprague DS (2014) Life history tactics in monkey and apes : focus on female-dispersal species. In : Yamagiwa J & Karczmarski L (eds), Primate and Cetacean : field research and conservation of complex mammalian societies, Springer, Tokyo, pp. 173-206.

著書

  1. 山極壽一, 2013. 「移動の心理を霊長類に探る」、印東道子編『人類の移動誌』、臨川書店、pp. 38-53.
  2. 山極壽一, 2013. 「京都大学の教養教育について考える」、安達千李他編『ゆとり京大生の大学論』、ナカニシヤ出版、pp. 74-87.
  3. 山極壽一, 2013. 「老いはどのように進化してきたか―少子高齢化社会の生物学的背景」、横山俊夫編『達老時代へ』、ウェッジ選書、pp. 29-64.
  4. 山極壽一, 2014. 「ゴリラツーリズム」、松田素二編『アフリカ社会を学ぶ人のために』、世界思想社、pp. 236-237.

総説・その他

  1. 山極壽一, 2013. 「ゴリラ社会の“負けない論理”に学ぼう」、関野吉晴対論集『人類滅亡を避ける道』、東海大学出版会、pp. 159-176.
  2. 山極壽一, 2013. 「ゴリラとの再会」、随想、神戸新聞夕刊5月1日
  3. 山極壽一, 2013. 「作り手による「物語」―多様な視点から解釈を」、時代の風、毎日新聞朝刊5月5日
  4. 山極壽一, 2013. 「私と外国語」、Harmony, 42:1-2
  5. 山極壽一, 2013. 「ジャングルの音」、随想、神戸新聞夕刊5月20日
  6. 山極壽一, 2013. 「類人猿の子育てから人間の家族の起源に迫る」、ぷろぽ2013年5月号、pp. 26-29.
  7. 山極壽一, 2013. 「ゴリラの子育てに学ぼう」、大学ジャーナル別冊、5月20日、9ページ
  8. 山極壽一, 2013. 「水とともにある暮らし」、随想、神戸新聞夕刊、6月4日
  9. 山極壽一, 2013. 「老年期の意味―目標なく生きる重要性」、時代の風、毎日新聞朝刊6月9日
  10. 山極壽一, 2013. 「泣かないゴリラの赤ちゃん」、随想、神戸新聞夕刊、6月21日
  11. 山極壽一, 2013. 「負けない構え」、随想、神戸新聞夕刊、7月4日
  12. 山極壽一, 2013. 「ゴリラを通してヒトを知る」、くにたち公民館だより, 641: 1-3.
  13. 山極壽一, 2013. 「ヒューマノイドの時代―人間のロボット化危惧」、時代の風、毎日新聞朝刊7月14日
  14. 山極壽一, 2013. 「エコツアーによる地域振興と野生動物保全―アフリカから日本を考える」、JWCS通信, 69: 2-7.
  15. 山極壽一, 2013. 「ゴリラとナンバ歩き」、医道の日本8月号、p. 60.
  16. 山極壽一, 2013. 「裸足で味わう世界の肌触り」、随想、神戸新聞夕刊、8月6日
  17. 山極壽一, 2013. 「思春期スパート」、随想、神戸新聞夕刊、8月21日
  18. 山極壽一, 2013. 「京都大学霊長類学研究のすばらしき伝統」、kotoba, 13 : 48-53.
  19. 山極壽一, 2013. 「ゴリラのエコツーリズム」、青淵, 775 : 2-3.
  20. 山極壽一, 2013. 「理学研究科の未来:研究科長退任にあたって」、京都大学大学院理学研究科・理学部弘報, 195 : 2.
  21. 横山俊夫・やなぎみわ・山極壽一・松林公蔵・深澤一幸, 2013. 「老いを楽しむ」、横山俊夫編『達老時代へ』、ウェッジ選書、pp. 173-231.
  22. 山極壽一, 2013. 「人間を作るのは―自然と歴史 旅を重ねて」、時代の風、毎日新聞朝刊8月18日
  23. 山極壽一, 2013. 「エコツーリズム―日本の知見 アフリカに」、時代の風、毎日新聞朝刊9月22日
  24. 山極壽一, 2013. 「老ゴリラとの再会―記憶が形作る人間社会」、時代の風、毎日新聞朝刊10月27日
  25. 山極壽一, 2013. 「エコツアーによる地域振興と野生生物保全:アフリカから日本を考える(前篇)」、環境と正義, 163 : 14-15.
  26. 山極壽一, 2013. 「アフリカで生物学に求められること」、アフリカ研究, 83 : 64-66.
  27. 山極壽一, 2013. 追悼「八木さんと歩いたアフリカ」、アフリカ研究, 83 : 89-92.
  28. 山極壽一, 2013. 「カフジ・ビエガ国立公園における類人猿の保護活動と環境教育」、JWCS通信, 70 : 4-5.
  29. 山極壽一, 2013. 「人間の危機管理とは何か―他人思う心もってこそ」、時代の風、毎日新聞朝刊12月1日
  30. 山極壽一, 2014. 「エコツアーによる地域振興と野生生物保全:アフリカから日本を考える(後篇)」、環境と正義, 164 : 14-15.
  31. 山極壽一, 2014. 「野生の心―大切な幼い時の体験」、時代の風、毎日新聞朝刊1月5日
  32. 山極壽一, 2014. 「贈る気持ちと返す気持ち―人間独特の互酬性」、時代の風、毎日新聞朝刊2月9日
  33. 山極壽一, 2014. 「食文化から暮らし再考」、1月24日、山陰新聞、1月29日、大阪日日新聞、1月30日、神戸新聞、福井新聞、長崎新聞、2月11日、四国新聞
  34. 山極壽一・濱野智史, 2014. 「人間は正しくサル化しているか?」、CEL, 106: 7-12.
  35. 山極壽一, 2014. 「ソチ五輪の日本選手―世界に挑む心育てるには」、時代の風、毎日新聞朝刊、3月9日
  36. 山極壽一, 2014. 「プライベートな暮らし」、こころの森、3月13日、福井新聞朝刊
  37. 山極壽一, 2014. 「大人になって気づいた“誤解”ロバート・バランタイン『さんご島の三少年』」、私を育ててくれた一冊、考える人, 48: 58-59.

学会およびシンポジウム発表

  1. Yamagiwa J (2013) Evolution of life history and origin of human family. Neuro 2013, 22 June, Kyoto International Conference Center (Kyoto).
  2. Yamagiwa J (2013) Man is still traveling between nature and history. The 17th World Congress of the International Union of Anthropological and Ethnological Sciences, Plenary Debate “Human have no nature, what they have is history”. August 5, University of Manchester (UK)
  3. Yamagiwa J (2014) Social structure and life history strategy of gorillas. PWS kick-off symposium, International Institute for Advanced Studies, March 6, Kyoto
  4. 足達太郎・山極壽一, 2013. アフリカ生物学フォーラム「生物学はアフリカのために何ができるのか」、日本アフリカ学会第50回学術大会、5月25日、東京大学駒場キャンパス(東京)
  5. 山極壽一, 2013. 「マウンテンゴリラとローランドゴリラ」、上野動物園ゴリラフェスタ2013「日本のゴリラからアフリカのゴリラへ」、5月26日、上野動物園動物園ホール(東京)
  6. 山極壽一, 2013. 「エコツアーによる地域振興と野生生物保全―アフリカから日本を考える」、野生生物保全論研究会総会セミナー、6月11日、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)国連大学(東京)
  7. 山極壽一, 2013. 「野生動物と人間の明日を探る」、朝日地球環境フォーラム2013、10月1日、帝国ホテル東京(東京)
  8. 山極壽一, 2013. 「野生のゴリラに挑む―京都大学のフィールドワーク」、京都大学東京フォーラム「京都学派の探検―フィールド研究の伝統―」、10月4日、ホテルニューオータニ(東京)
  9. 山極壽一, 2013. 「人間以外の霊長類の所有、贈与、分配、交換」、国立民族学博物館共同利用研究会「贈与、分配、交換」、10月27日、国立民族学博物館(吹田市)
  10. 山極壽一・中務真人, 2013. 第67回日本人類学会大会シンポジウム「老年期の進化と社会的意義」、11月4日、国立科学博物館筑波研究施設(つくば市)
  11. 山極壽一, 2013. 「ゴリラの森で学んだこと」、愛すべき森の隣人たち~アフリカ大型類人猿との共存への挑戦、11月6日、京都大学東京オフィス(品川)
  12. 山極壽一, 2013. 「老年期の進化」、第25回エラストマー討論会特別講演、12月11日、京都大学桂キャンパス(京都市)
  13. 山極壽一, 2013. 「学びの場としての屋久島―サルとヒトと歩いた40年」、屋久島学ソサエティ創立総会記念シンポジウム基調講演、12月15日、屋久島町総合文化会館(屋久島町)
  14. 山極壽一, 2013. 「言語以前のコミュニケーションと社会性の進化」、第8回研究大会「ネアンデルタールとサピエンス交代劇の真相:学習能力の進化に基づく実証的研究」特別講演、12月21日、京都大学・稲盛財団記念館(京都市)
  15. 山極壽一, 2013. 「野生動物の保全と共存へ向けて」、日本学術会議シンポジウム、2月9日、日本学術会議(東京)
  16. 山極壽一, 2014. 「ゴリラから見た人間の少子化と子育て」、ひと・健康・未来シンポジウム2014東京「少子化と子育て支援の問題点を探る」、2月16日、ミキホール(東京)